ホームページに問い合わせが来ないとき、原因は「そもそも来ていない」と「来ているのに届いていない」の2種類に分かれます。打ち手が違うので、集客や導線を触る前に、この切り分けを先に済ませてください。
この記事は、自社サイトの問い合わせフォームを実際に運用している Web 担当・問い合わせ担当の方に向けたものです。流入そのものを増やす方法はホームページの問い合わせを増やす方法に譲り、ここでは「送信されたはずのものが消えていないか」を確かめる手順を扱います。
「来ない」には2種類ある。集客を疑う前に切り分ける
問い合わせが来ない原因は「送信されていない」か「送信されたのに届いていない」のどちらかであり、後者は放置しても自分からは気づけません。
「来ていない」はアクセス解析や売上の数字に表れます。困るのは「届いていない」ほうです。届いていない側だと分かった後の、ブラウザ・サーバー受付・メール送信・受信側という4段の技術的な切り分けはフォームから送信できない・届かないときの切り分け手順で詳しく扱います。受信トレイが静かなのは両方同じで、見え方では区別がつきません。多くの場合、後日お客様から電話で「メールしたのに返事がないのですが」と言われて初めて発覚します。
| 確認する場所 | 来ていない場合 | 届いていない場合 |
|---|---|---|
| フォームの送信記録(DB・管理画面) | 0件 | 件数が残っている |
| 通知メールの受信トレイ | 0通 | 0通(ここは同じに見える) |
| 迷惑メールフォルダ・検疫 | 0通 | 該当メールが見つかることがある |
| アクセス解析のフォーム表示・到達数 | 少ない | 平常どおり |
| 発覚のきっかけ | 反響が伸びない | 「返事がない」と電話が来る |
決定的な違いは1行目です。送信記録が残っているかを見れば、ほぼ一発で分かれます。 ところが、この送信記録がそもそも存在しないサイトが少なくありません。
たとえば WordPress で広く使われている Contact Form 7 は、送信内容をサイト側に保存する機能を単体では持ちません。保存プラグインである Flamingo の公式説明にも、Contact Form 7 が「単体では送信されたメッセージを保存する機能を持ちません」と明記されています(Flamingo — WordPress.org)。つまり通知メールが飛ばなければ、その問い合わせはどこにも残らずに消えます。切り分けの土台がない状態です。
30分でできる切り分け手順
最初にやるのはテスト送信で、社内 PC からではなく、社外ドメインのアドレスとスマートフォンの回線から送るのが要点です。社内回線・社内ドメインからのテストは、通りやすい条件でしか試せていません。自社サイトと複数の実サイトにフォーム判定を設置して運用してきましたが、社内から送ったテストだけが通っていて実際の送信が落ちていた、という取り違えは実際に起こります。
- スマホの回線で、社外の空きアドレス(自分の個人アドレスなど)を差出人欄に入れて送信する。 本文は「テスト」ではなく、実際の問い合わせに近い短い文面にします。判定の対象になる文面で試す必要があるためです。
- 送信記録を見る。 記録が残っていればフォームは動いています。残っていなければ、送信がサーバーに届いていないか、スパム判定で保存前に捨てられています。
- 受信トレイを確認する。 届いていれば正常。届いていなければ次へ。
- 迷惑メールフォルダと検疫(隔離)を確認する。 ここで見つかれば、原因はフォームではなくメール側です。
| 送信記録 | 通知メール | 疑うべき場所 |
|---|---|---|
| 残っている | 届く | フォームは正常。原因は流入側 |
| 残っている | 届かない | 通知メールの送信設定(From・SPF・受信側フィルタ) |
| 残っていない | 届かない | 送信処理の失敗、またはスパム判定で保存前に破棄 |
| 記録の仕組みがない | 届かない | まず記録を残す仕組みを入れる |
3行目と4行目に当てはまる場合、本物の問い合わせが消えていても誰も気づけません。 ここが最大のリスクです。
「届いていない」側の原因は4つに絞れる
届いていない原因の大半は、通知メールの差出人設計、ドメイン認証、しきい値の上げすぎ、スパム判定による通知の停止の4点に集約されます。
1. 通知メールの From に、送信者が入力したアドレスを入れている
もっとも多いのがこれです。通知メールは自社サーバーから送っているのに、差出人(From)だけが送信者の入力した他社ドメインになっている状態です。他社ドメインの認証設定は自社では変更できないため、認証が通らない差出人として扱われやすくなります。Gmail は2024年2月1日以降、Gmail 宛に送るすべての送信者に送信ドメインへの SPF または DKIM の設定を求めています(Gmail 送信者のガイドライン)。From は自社ドメインの固定アドレスにし、送信者のアドレスは Reply-To に入れるのが基本です。
2. SPF が未設定、または送信経路と噛み合っていない
SPF は「このドメインのメールは、このサーバーから送ってよい」と DNS に宣言する仕組みです。レンタルサーバーの標準機能で送っていて SPF を書いていない、配信サービスに切り替えたのに SPF を更新していない、といった状態はよく見かけます(SPF・DKIM・DMARCとは)。
3. スパム判定のしきい値を上げすぎている
営業メールが多いサイトほど起きます。フィルタを強くすると営業は減りますが、同じ分だけ本物が落ちる確率も上がります。しきい値は「営業をどれだけ止めたか」ではなく「本物を落としていないか」で評価してください(reCAPTCHA で営業メールが減らない理由)。
4. スパム判定された送信は、通知メールが飛ばない
スパム判定を担う仕組みが「スパム」と判断した送信は、通知メールが送られません。受信トレイだけを見ていると、その送信は存在ごと見えなくなります。記録が残る仕組みでも、スパム扱いのものは通常の一覧と別の場所に置かれることがあり、一覧だけ見ても気づけません。どこで何が止まるかはContact Form 7 のスパム対策で整理しています。
さらに、受信側で見つけたとしても猶予は長くありません。Gmail のヘルプでは、迷惑メールとして扱われたメールは30日後に自動的に削除されると案内されています(Gmail ヘルプ)。Microsoft 365 の検疫も既定で15日または30日で、保持期間を過ぎたメッセージは完全に削除され回復できないとされています(Microsoft Learn)。四半期に一度しか見ない運用では、見る前に消えています。
「来ていない」側は、フォーム表示数から順に見る
来ていない側は、フォームまで来ていないのか、到達しているのに送信されていないのかで分けます。
アクセス解析でフォームページの表示数を見て、表示はあるのに送信がゼロに近いならフォーム側、表示数が少ないなら流入側の課題です。フォーム側の要因は主に3つです。
- 入力項目が多い。 必須項目が増えるほど離脱します。最初の接触で本当に必要な項目だけに絞ります。
- スマートフォンで押しづらい。 送信ボタンが画面外にある、入力欄が小さい、エラー表示が入力欄から離れている。実機で自分が送れば大半は分かります。
- エラーで止まっている。 必須チェックや確認画面で弾かれ、諦められています。
流入と導線の増やし方は冒頭で挙げた記事にまとめていますが、増やす前に「届く状態」を作るのが先です。届かないまま流入を増やしても、失う件数が増えるだけです。
実データが示す落とし穴:営業が多い現場ほど本物が消える
営業メールの比率が高いフォームほど、担当者が通知メールを見なくなり、結果として本物が埋もれます。
Hajik が分析した、美容商社(国内最大手・上場)の実フォームデータ(3種類・合計1,894件)では、問い合わせフォームで営業(確度が高いもの)が12.9%、汎用フォームで56.2%、採用フォームでは65.8%が人材サービスの営業でした。中途採用フォームに限れば73.1%です。分類は文面の簡易ヒューリスティックによるもので、業種・規模・フォームの性格によって比率は大きく変わります。あくまで一社・一時点のサンプルとして見てください。
半分以上が営業で埋まると、担当者はメールソフトのルールで別フォルダへ自動振り分けし、やがてそのフォルダを見なくなります。本物の問い合わせも、この振り分け先に一緒に落ちています。 技術的には届いているのに、業務としては届いていません。
同じデータでは、同じ企業が同一フォームに10件以上送っている例も複数ありました。うんざりして送信元のドメインごと止めたくなりますが、同じ会社からでも受け取る側の文脈によって営業か本物かは変わります。企業単位の一律ブロックは、いつか本物を巻き込みます。届いた内容そのもので判断する層を足すほうが安全です(問い合わせフォームの営業メール対策)。
月1回、両方まとめて点検する
点検は月1回で十分ですが、「来ていない」と「届いていない」の両方を同じ日にやるのが要点です。迷惑メールは Gmail で30日、Microsoft 365 の検疫も既定で15日から30日で消えるため、これより長い間隔では確認する対象が残っていません。
| 項目 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| テスト送信 | 社外アドレス・スマホ回線から1件送る | 3分 |
| 通知メールの到達 | 受信トレイに届いたか確認 | 1分 |
| 迷惑メール・検疫 | 本物が落ちていないか目視(件名を固定文言にすると検索が楽) | 5分 |
| 件数の突合 | 送信記録の件数と通知メールの件数を突き合わせる | 5分 |
| フォーム到達数 | アクセス解析でフォーム表示数と送信数を確認 | 5分 |
件数の突合が一番効きます。送信記録が20件で通知メールが18通なら、2通はどこかで消えています。この差分を毎月見れば「気づけない」状態から抜けられます。
よくある質問
問い合わせがゼロの月があるのは異常ですか
異常とは限りません。前述の実フォームデータでも、問い合わせフォームは平常月に2〜3割が営業で、12月から1月には営業がほぼゼロになる月もありました。季節で大きく揺れます。ただし「送信記録もゼロ」なのか「送信記録はあるが通知が来ていない」のかは必ず確認してください。前者なら流入の問題、後者は事故です。
スパム判定を厳しくすれば営業メールは減りますか
減りますが、本物が落ちる確率も同時に上がります。厳しくした直後は静かになるため、成功したように見えるのが厄介です。しきい値を上げた月は、迷惑メールフォルダの目視回数を増やして本物が混ざっていないか確かめてください。営業を1件見逃す損失より、本物を1件落とす損失のほうが大きいはずです。
送信記録を残すにはどうすればよいですか
使っているフォームに保存機能があるかをまず確認します。Contact Form 7 のように単体では保存しないものは、保存用のプラグインか記録の仕組みを別に用意します。記録がないと、届いていないことにも気づけず、後から検証もできません。
まとめ:明日やること
- スマホの回線と社外アドレスから、自社フォームに1件テスト送信する。
- 送信記録が残っているかを確認する。残らない仕組みなら、記録を残す手当てを最優先で入れる。
- 迷惑メールフォルダと検疫を開いて、過去に本物が落ちていないかを1回だけ全部見る。
この3つで、原因が「来ていない」側か「届いていない」側かはほぼ確定します。自社のフォームに何がどれくらい届いているかを把握したいときは、無料診断から始められます。届いた内容を判定して記録に残す仕組みを試すなら14日間の無料トライアルがあります。Hajik は 99% 以上を遮断し、残る約 1% は人が判断する前提で設計しています。最後の判断を人が握れる状態を保つことが、本物を見失わない条件です。