資料請求フォームは「資料と引き換えに連絡先をもらう」フォームです。項目を増やすほど後工程は楽になり、送信数は減ります。そしてこの入口には、見込み客だけでなく競合と営業も来ます。
この記事は、自社サイトの資料請求フォームを作る・運用する Web 担当とマーケ担当に向けて、項目設計・送信後の渡し方・届いたものの仕分け・集めた個人情報の扱いまでを、Hajik が実際のフォームデータを分析して得た数字と自社の運用経験をもとに整理したものです。フォーム全般の設計は問い合わせフォームの作り方で扱っているため、ここでは資料請求フォーム固有の論点に絞ります。
項目設計:必須は「資料を渡した後に使うもの」だけに絞る
資料請求フォームの項目は、請求後の動き方が決まって初めて決められます。
営業担当が電話をかける運用なら電話番号が要りますし、かけないなら要りません。後工程で使わない項目を「一応」取ると、入力の手間が増えて送信数が落ち、しかも保護すべき個人情報だけが増えます。問い合わせフォームとの決定的な違いは、相手の目的が「あなたと話すこと」ではなく「資料を手に入れること」だという点です。相手はまだ会話を望んでいないので、項目を増やした分だけ素直に離脱します。
| 項目 | 推奨 | 判断の根拠 |
|---|---|---|
| 会社名 | 必須(BtoB) | 誰に渡した資料かを記録するため。屋号なしの個人事業主が弾かれない形にする |
| 氏名 | 必須 | 呼びかけと重複判定に使う |
| メールアドレス | 必須 | 資料の送付先。到達しないと請求が成立しない |
| 部署・役職 | 任意または選択式 | 決裁者かどうかで動き方を変えるなら取る。変えないなら取らない |
| 電話番号 | 用途次第 | かけない運用なら不要。必須にすると送信数が目に見えて落ちる |
| 従業員規模・業種 | 選択式・任意 | 資料の出し分けや優先度づけに使うなら有効 |
| 検討時期 | 選択式・任意 | 「情報収集のみ」を選べるようにすると本音が出やすい |
| 自由記述 | 任意 | 消さないこと。仕分けの判断材料が消えます(後述) |
会社名を必須にするかは迷いどころですが、BtoB の資料であれば必須で構いません。ただし「株式会社」が入っていないと送信できない、といった形式チェックは避けてください。個人事業主も、これから起業する人も、本物の見込み客です。入口の形式チェックで落ちるのは、いつも営業ではなく本物のほうです。
部署・役職は、取得したデータを実際に何かの判断に使うのでなければ取らないほうが健全です。個人情報は使わないなら集めない、が原則です(問い合わせフォームの個人情報の扱い方)。自由記述以外を選択式にすると、入力コストが下がるうえに表記ゆれが消え、後の集計とルール化が楽になります。
短いフォームは件数を増やし、仕分けコストも増やす
項目を減らせば送信数は増えますが、増えた分の中身は「誰でも書ける入口」に寄っていきます。
Hajik が分析した、美容商社(国内最大手・上場)の実フォームデータでは、用途を限定した問い合わせフォームで営業(確度高)は 12.9% でした。一方、用途を限定していない汎用フォームでは営業が合計 56.2% を占めています。同じ会社の同じサイトでも、入口の性格が違うだけでこれだけ差が出ます。なおこの分類は簡易なヒューリスティックによるもので、業種・規模・フォームの性格によって比率は大きく変わります。あくまで一社・一時点のサンプルとして読んでください。
つまり「項目を減らして件数を増やす」施策は、常に「仕分けの手間を増やす」施策とセットです。獲得件数だけを KPI にすると、増えた分が営業で埋まっていても数字上は成功に見えます。フォームを短くするなら、届いたものを仕分ける手段を先に用意するのが順番です(資料請求を含む獲得施策全体の設計はリード獲得の方法で扱っています)。
送信後の設計:即時ダウンロード・自動返信・人が送付の3択
資料の渡し方は3通りあり、メールアドレスの正しさをどこまで確認したいかで選びます。
| 方式 | メール到達の確認 | 相手の待ち時間 | 運用負荷 |
|---|---|---|---|
| 送信直後の画面で即ダウンロード | できない | ゼロ | 低い |
| 自動返信メールに URL を載せる | できる(届かなければ請求は成立しない) | 数秒〜数分 | 低い |
| 担当者が確認してから送付 | できる | 数時間〜翌営業日 | 高い |
多くの場合は自動返信メールが妥当です。タイプミスや捨てアドレスを自然にふるい落とせて、相手も待たせません。
ダウンロード URL については、次の2点を前提に置いてください。ひとつは、URL は転送されるということです。URL を知っている人は誰でも開けるため、社外に出したくない資料をフォームの先に置くべきではありません。もうひとつは、推測されにくい URL にすることです。連番のファイル名は、一度取得されると全件たどられます。
有効期限は目的次第です。期限を切ると再ダウンロードの問い合わせが増えるため、機密性の低い会社案内やサービス紹介なら無期限で構いません。
資料請求フォームには、競合と営業も来る
会社名と連絡先を書く前提の入口は、営業側から見ると「送信の口実が立つ入口」でもあります。
先の実データでは、用途によって営業の混ざり方が大きく違いました。採用フォームでは全体の 65.8%、中途採用に限れば 73.1% が人材サービスの営業でした。汎用フォームは 56.2%、問い合わせフォームは 12.9% です。資料請求フォームは「会社名を書いて送る」形式である以上、営業側にとっては自社の会社名を名乗って接触する自然な導線になります。
実際に届く文面には型があります。「突然のご連絡失礼いたします」「貴社サイトを拝見しました」「ご提案させていただきたく」といった定型の入りに、自由記述欄いっぱいのサービス説明が続くパターンです。同じ企業が同一フォームに 10 件以上送っている例も、分析対象のなかに複数ありました。
一方で、競合の資料請求は止められませんし、止める必要もありません。同じ会社からの請求でも、部署が違えば本物の検討であることは普通に起こります。送信元の会社名で機械的に弾く運用は作らないでください。判定の単位は「会社」ではなく「今回の1件」です。
仕分けを前提にした項目設計とは、判断材料を残す設計のこと
フォームの項目で営業を排除しようとすると、営業より先に本物が落ちます。項目は排除ではなく、後で判断するための材料を残すために設計します。
具体的には次の3つです。
第一に、自由記述欄を消さないこと。営業を減らしたい一心で自由記述を廃止する運用を見かけますが、本物と営業の差がいちばん出るのがこの欄です。同じサイトの問い合わせフォームの実データで見ると、本物の送信は驚くほど短く、「この商品の在庫はありますか」程度の一行が普通です。逆に営業は定型の長文になります。ただし短い=本物、長い=営業という単純な判別はできません。短文を機械的に弾く運用は、営業より先に本物を落とします。
第二に、どの資料に対する請求かをフォーム側で保持すること。資料ごとにフォームを分けても、hidden 項目で資料名を送っても構いません。「何の資料を請求したか」は強い手がかりです。営業は資料の中身に触れません。
第三に、届いたものはブロックではなくラベルで扱うこと。Hajik を自社サイトと複数の実サイトに設置して運用していますが、設計上いちばん重要なのは「迷ったら本物として通す」ことです。営業を1件見逃すコストは数十秒ですが、本物の請求を1件落とすコストは商談そのものです。導入はサイトに script タグを1行、送信された瞬間に内容を判定し、営業らしいものにラベルを付けて分けます。効果としては 99%+ を遮断し、残り約 1% は人が判断する前提で運用しています。仕分けの具体的な手順は問い合わせフォームの営業メール対策にまとめました。
なお保管については、フォームの内容をブラウザ内で暗号化してから保存する方式(E2EE)を採っており、保管データを Hajik 側で復号することはできません。ただし AI が判定する瞬間だけは内容をそのまま渡します(マスクすると本物の申込が誤判定されるためです)。クレジットカード番号・マイナンバー・銀行口座・パスポート番号・健康情報の5種類は、ブラウザ内で除去してから送ります。
集めた個人情報の扱い:利用目的と、メール配信は別の話
資料請求で取得した連絡先をメール配信に使うなら、利用目的の書き方と配信の同意を分けて設計します。
個人情報保護法は、利用目的を「できる限り特定しなければならない」(法第17条第1項)と定め、特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱うには「あらかじめ本人の同意を得なければならない」(法第18条第1項)としています(参照:個人情報保護委員会 ガイドライン(通則編))。資料請求フォームの利用目的に「資料の送付のため」としか書いていない状態で、そのリストにメールマガジンを送るのは、この範囲を超える可能性があります。利用目的の記載に、営業活動やご案内の送付を含めておくのが素直な手当てです。
さらに広告宣伝メールについては特定電子メール法があり、原則として、あらかじめ送信に同意する旨を通知した相手にのみ送信できる建てつけになっています(参照:総務省 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)。取引関係にある者などの例外はありますが、資料を請求しただけの相手がそこに当たるかは自明ではありません。フォームに「メールマガジンの配信を希望する」というチェックボックスを1つ置き、同意した事実を記録として残しておくほうが、後から悩むより安く済みます。同意の考え方はオプトインとはで詳しく整理しています。
なお本節は一般的な情報であり、法的助言ではありません。個別の判断は専門家にご確認ください。
よくある質問
資料請求フォームの項目は何個までにすべきですか
上限の正解はありません。決め方は「後工程で使う項目だけを必須にする」で、実務的には必須5つ前後に落ち着くことが多いです。項目を増やすなら、増やした分だけ送信数が落ちることと、集めた個人情報を守る責任が増えることの両方を受け入れる判断になります。
会社名を必須にすると、個人の見込み客を逃しませんか
BtoB の資料であれば必須で問題ありませんが、入力チェックは緩くしてください。法人格の有無や表記の形式でエラーを返す設計にすると、個人事業主や起業準備中の人が入口で落ちます。営業を減らす目的で形式チェックを厳しくするのは、費用対効果が最も悪い施策です。
競合からの資料請求はブロックすべきですか
ブロックは推奨しません。同じ会社でも、部署や担当者が変われば本物の検討になり得ます。会社単位の判定は誤りを固定化するので、1件ごとに内容で見て、必要ならラベルを付けて分ける運用にしてください。
資料請求した人にメールマガジンを送ってよいですか
利用目的に配信が含まれていること、そして配信への同意が取れていることを確認してください。資料請求という行為だけをもって配信の同意とみなすのは無理があります。フォームに配信希望のチェックボックスを置き、記録を残すのが確実です。
フォームの項目設計だけで営業メールは減りますか
多少は減りますが、なくなりません。項目設計で減らせるのは自動化された送信のほうで、人が手で書いて送る営業は残ります。項目設計と、届いた後の仕分けは別の打ち手として両方持つのが現実的です。自動化された送信そのものを止める手法は問い合わせフォームの bot 対策にまとめています。
明日やること
- 資料請求フォームの必須項目を並べ、「この項目を後工程のどこで使うか」を1項目ずつ言えるか確認する。言えない項目は任意に落とす
- 直近1か月の資料請求を全件開き、本物・営業・判断に迷うの3つに分ける。営業の割合を数字で出す
- プライバシーポリシーとフォームの利用目的の記載を読み直し、メール配信に使うなら記載と同意チェックボックスを追加する
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