営業電話の多くは、その前に問い合わせフォームから営業を送ってきた相手が、返事がないので経路を変えてかけ直してきたものです。だから電話口の言い回しだけを磨いても、対応の総量は減りません。この記事は、自社サイトの問い合わせフォームを運用していて、フォームと代表電話の両方で営業に時間を取られている総務・Web担当・問い合わせ窓口の方に向けて、そのまま使える断り文句と、フォーム側と電話側で判断基準を揃える手順をまとめました。
なお、法令に触れる部分は一般的な情報であり法的助言ではありません。個別の判断は専門家にご確認ください。
フォーム営業のあとに電話が来る、という一本の流れ
営業電話は単独で発生しているのではなく、フォーム営業の続きとして起きています。
送る側の手順はおおむね決まっています。企業リストを作り、各社のフォームに提案文を送り、一定期間返事がなければ代表番号に架電する。一斉に送れるフォームが先に使われ、電話は「反応しなかった会社」に絞って後から使われます。だから電話口で「先日お問い合わせフォームからご連絡した件で」と言われるのです。この一言は用件の説明ではなく、取り次いでもらうための接点として置かれています。
受け手から見ると、これは同じ案件を二度捌かされている状態です。フォームで受けた人が読んで判断し、数日後に電話に出た別の人がもう一度ゼロから判断する。窓口が分かれているぶん、社内では別々の出来事として処理され、記録も残りません。
私たちも代表番号にかかってくる営業電話を同じように受けています。フォーム側の受信記録と電話のメモを突き合わせると、電話で名乗った社名が数日前にフォームから届いていた、という重なりが珍しくありませんでした。ルールを決めるまでは電話口で「担当に確認します」と言ってしまい、翌週また同じ会社からかかってくる、を繰り返していました。
電話の断り方を強くするだけでは総量は変わりません。フォーム側に何が届いているかを見えるようにして、電話と同じ基準で扱うのが近道です。
電話が鳴る前に、フォームには何が届いているのか
先に届いているフォーム側の中身を見ると、電話がかかってくる理由がはっきりします。
私たちは自社サイトを含む複数の実サイトにHajikを設置して運用しており、あわせて美容商社(国内最大手・上場)の実フォームデータ1,894件・約20か月分を分析しています。いずれもreCAPTCHA v3を通過した送信、つまり明らかなボットが除かれたあとに残ったものです。それでも人が書いた営業がこれだけ含まれていました。
| フォームの用途 | 営業とみられる比率 | 多く見られた営業の種類 |
|---|---|---|
| 問い合わせフォーム | 12.9% | Web制作・SEO・広告の提案 |
| 汎用フォーム | 56.2% | 営業代行・コンサル・動画制作 |
| 採用フォーム(全体) | 65.8% | 人材紹介・採用支援 |
| 採用フォーム(中途採用) | 73.1% | 人材紹介・採用支援 |
とくに採用フォームは通年で50%を超え、閑散期がほとんどありません。「候補者のご紹介」「求人を拝見しました」といった文面がフォームに届き、その数日後に人事宛の電話が鳴る、という流れが起きます。なお、これは一社・一時点のサンプルで、簡易な分類による比率です。業種・規模・フォームの性格によって数字は大きく変わります。
同じ企業が同一フォームに10件以上送っている例も複数ありました。ただし、だからといって「この社名は今後すべて断る」というリストは作らないでください。判断するのは社名ではなく、そのときの用件です。フォームに届く文面の型は営業メールの例文パターンに、送る側の仕組みはフォーム営業とはにまとめています。
場面別・そのまま使える断り方
断り方は5場面を用意しておけば足ります。いずれもフォーム側の受信記録で裏が取れる前提の言い方です。
1. 受付での一次対応(用件が営業だと分かった時点)
相手「◯◯サービスのご案内でお電話しました。ご担当者様はいらっしゃいますでしょうか」
自分「恐れ入ります。当社では営業のご案内はお取り次ぎしない決まりとなっております。失礼いたします」
「担当者は不在です」と言わないのがポイントです。不在は「いつならいますか」を呼びます。実際に席にいなくても「在席にかかわらず営業のご案内はお取り次ぎしておりません。折り返しもいたしかねます」と、在席を論点にしない言い方にします。
2. 「先日フォームからご連絡した件で」と言われたとき
自分「お問い合わせフォームでいただいたご用件は、内容を確認したうえで必要な場合のみこちらからご連絡しております。ご案内のご提案でしたら、お電話でのお取り次ぎはいたしかねます」
フォームに送った事実は、取り次ぐ理由にはなりません。「送ったのなら見ているはず」と受け止めると、フォームで一度断った判断が電話で覆ります。折り返すかどうかは記録を見て自社が決める、という立て付けを言葉にしておきます。
3. 担当者を名指しでかけてきたとき
自分「恐れ入ります、お約束のあるお電話でしょうか」
相手「以前ご挨拶をさせていただいた者で……」
自分「お約束がないようでしたら、営業のご案内としてお断りしております。ご用件はお問い合わせフォームからお願いいたします」
担当者名はサイトの会社概要や過去のフォーム自動返信から拾えます。名前を知っていること自体は、関係があることの証明にはなりません。約束の有無で判断します。
4. 何度もかけてくる相手
自分「前回もお断りしております。恐れ入りますが、今後のご連絡はお控えください」
このときだけは記録を残します。日時・社名・名乗った担当者名・電話番号の4つで十分です。フォームの受信記録にも同じ社名が並んでいれば、経路をまたいだ常習の相手だと分かります。
5. 社長・役員宛
自分「代表につなぐお電話は、事前にお約束のある方に限らせていただいております。ご用件は書面かお問い合わせフォームからお願いいたします」
社長宛は最も迷う場面です。取り次ぐかを個人が決めず、約束の有無だけで決めます。フォームに「代表者様へ」と宛てて届く提案も同じ扱いにします。
再架電を呼ぶ4つのNGフレーズ
再架電を呼ぶ返し方には共通点があります。「次の接点」を相手に渡してしまう言い方です。
| 言いがちな返し | 相手側の受け取り方 | 代わりに言う |
|---|---|---|
| 担当に伝えておきます | 社内に話が通った=見込みあり。次回「先日お伝えいただいた件で」と再架電される | 営業のご案内はお取り次ぎしない決まりです |
| こちらから改めてご連絡します | 返事待ちの状態。返事がなければ催促の電話が来る | こちらからのご連絡はいたしかねます |
| 今は立て込んでおりまして | 時間帯を変えればつながる | 時間帯にかかわらずお断りしております |
| 資料だけ送ってください | 宛名・住所・メールアドレスが確定し、以後の送付先になる | 資料のご送付も不要です |
「資料だけ送ってください」はその場をしのげますが、電話を1本減らす代わりにメールとフォームへの流入を増やします。断るなら電話の段階で断り切るほうが、全体の手間は少なくなります。
フォーム側と電話側で判断基準を揃える
片方だけ断っても総量は減らないので、用件の分類は両方の窓口で同じ表を使います。
| 用件 | 電話での一次対応 | フォームでの扱い |
|---|---|---|
| 既存取引先(請求・納期・不具合) | 取り次ぐ | 担当部署へ即転送 |
| 商品・サービス名を具体的に挙げた購入検討 | 取り次ぐ | 担当部署へ即転送 |
| 求人への応募・採用に関する質問 | 人事へ取り次ぐ | 人事へ転送 |
| サービスの売り込み・人材紹介・広告や制作の提案 | 定型文で終話 | 営業として仕分け、返信しない |
| 社名を名乗らない/用件を言わない | 定型文で終話 | 保留に置く |
| 判断がつかない | 社名・用件を記録して保留 | 保留に置き、担当者が確認 |
大事なのは最後の「保留」の行です。迷ったら切る、迷ったら捨てる、にすると、いつか本当の顧客を1件落とします。営業を1本取り次ぐ損失より、取引につながる問い合わせを1本落とす損失のほうがはるかに高くつきます。判定の設計でも守っている原則で、迷ったら本物として扱い、人があとから確認できる形に残します。
フォーム側でこの表をどう運用するかは問い合わせフォームの営業メール対策に、フォームに返信する場合の文面は営業メールの断り方にまとめました。
回線側の設定と、法律の建てつけ
言い回しの次の一手は回線側の設定ですが、法律で会社宛の営業電話を止めるのは建てつけが違います。
NTT西日本の加入電話には「迷惑電話おことわりサービス」があり、受けた直後に「144」をダイヤルしてガイダンスに従い「2」を押すと、以降その番号からの着信を拒否できます。登録できるのは最大6個(月額660円・税込)または最大30個(月額770円・税込)で、一部の通信事業者経由の通話や電話番号を通知できない通話は拒否登録できないと明記されています(NTT西日本)。番号を変えてかけ直されると効かないため、常習の相手を減らす手段です。
法律面では、特定商取引法の電話勧誘販売に再勧誘の禁止が定められています。ただしこれは消費者を守る規定で、消費者庁の解説ページは適用除外として「営業のため、又は営業として締結するもの」を挙げています(消費者庁)。会社宛のB2B営業電話にこの条文をそのまま持ち出すのは難しく、フォーム経由の営業も同様です。断る根拠は法律ではなく、自社の方針として説明します。
よくある質問
「フォームからご連絡しました」と言われたら、本当に届いているか確認すべきですか
その場で確認する必要はありません。届いていたとしても、取り次ぐ理由にはならないからです。確認するなら電話を終えたあとにフォームの受信記録を検索します。同じ社名が繰り返し送ってきているか分かると、以後の対応が早くなります。
電話で断ったのに、またフォームから送ってきます
経路が変わっただけで、送る側のコストはほとんど変わらないためです。電話側の運用だけを固めると、この移動が起こります。上の表をフォーム側にも適用し、営業として仕分けたものは返信しない、と決めておくのが対処になります。
断った会社を一覧にして全社で共有すべきですか
社名の一覧を「今後この会社は一律で断る」というブラックリストにするのはおすすめしません。同じ会社が、翌年には自社の仕入先や取引先として問い合わせてくることがあります。記録するのは社名ではなく「どんな用件だったか」にして、判断は毎回その用件で行うほうが安全です。
代表番号をやめて問い合わせフォームだけにするのは有効ですか
電話の本数は減りますが、営業がフォームに移動するだけです。上の表のとおり、汎用フォームでは半数以上が営業でした。窓口を1つにするなら、フォーム側の仕分けを先に用意してからにしてください。
まとめ:明日やること
- 4つのNGフレーズを紙に書き、電話機の横に貼る
- 用件の判断基準の表を自社に合わせて埋め、電話に出る全員とフォームを見る担当の両方に配る
- 断った電話の日時・社名・番号を1か月だけ記録し、フォームの受信記録と突き合わせる
- 自社のフォームに今どれくらい営業が届いているかを無料診断で確認する
Hajikは、フォームに届く営業メールを送信された瞬間に選別する日本語特化のサービスです。サイトにscriptタグを1行追加するだけで導入でき、プラグインもDNS変更も不要です。フォームの内容はブラウザ内で暗号化して保管するため、保管データをHajik側で復号することはできません(判定の瞬間だけ内容をAIに渡し、機微情報5種はブラウザ内で除去してから送ります)。効果は99%+の遮断、残り約1%は人が最終判断する前提で設計しています。14日間の無料トライアルから試せます。